ごあいさつ

シンポジウムの開催にあたって

今年は平成から令和に元号が変わり、あらたな時代の雰囲気に溢れた年になりましたが、平成7年に当地を襲った阪神・淡路大震災から四半世紀が経過する節目の年でもあります。この25年の間にわれわれは何を学び、何を伝え、どのような変化を生み出してきたのでしょうか。今回のシンポジウムでは、災害をとおして個人や地域社会にもたらされるポジティブな変化に目を向けたいと思います。

キーワードとして取り上げたのは「レジリエンス」という概念です。人は、災害、戦争、暴力などによって打ちのめされ、様々な心理的苦悩を抱えます。しかし、それに対処しはね返す力を持っており、心理学ではその力を「レジリエンス」と呼んでいます。レジリエンスを高めるものは、家族や親しい人との支持的な関係性、物事をポジティブに捉えられる能力、自尊感情の高さ、現実的で肯定的な目標設定、楽観主義などが指摘されています。こうした要素を高めていく支援が、傷ついた人々を回復させるために重要です。

同時に、地域社会としてのレジリエンスを高めることは、将来の災害に備えるために重要といわれており、防災学、土木学、あるいは経済学などの領域でも盛んに使われています。たとえば、OECD(経済協力開発機構)は、レジリエントな都市を作ることが持続的な成長を確保し人々の幸福度を高めるために必要で、社会、経済、統治、環境の4分野で適応力を高め、災害や経済危機などのショックに備えることが重要と指摘しています。考えてみると阪神・淡路大震災からの復興に関して、当時の貝原知事は「創造的復興」を旗頭に、災害前の状況に復旧させるのではなく、より強靱で希望に溢れた地域社会を作らなければならないと主張されました。この考えは、災害の経験から成長したレジリエントな地域社会を作りたいという考え方といえるでしょう。これに対して政府は「焼け太りは許さない」と否定的であったと伝えられていますが、東日本大震災後には国全体が共有する目標となっています。

今回のシンポジウムでは、災害が契機となって発展した心理的支援システムについて、アメリカ、インドネシア、そして東北から専門家を招いて、理解を深め議論したいと思います。今年は、当センターが設立され15年を経過した年でもあります。この間の、当センターの活動も振り返りながら、持続可能で発展的な「こころのケア」のあり方を考える機会にしたいと思います。沢山の方のご参加をお待ちしております。

兵庫県こころのケアセンターセンター長:加藤 寛
兵庫県こころのケアセンター
センター長
加藤 寛